中耳炎
中耳炎とは鼓膜の奥の中耳という空洞に、細菌が入り込み炎症が起きたり、滲出液(炎症の起こった所にしみ出してくる液)がたまったりする病気です。中耳炎には急性中耳炎、滲出性中耳炎、慢性中耳炎の3つがあります。
急性中耳炎 | 滲出性中耳炎 | 慢性中耳炎 | |
---|---|---|---|
症状 | 耳痛 | 軽度難聴 | 耳漏(反復性) |
耳漏 | 難聴(持続性) | ||
発熱 | |||
合併症 | 乳様突起炎 | 癒着性中耳炎 | 真珠腫性中耳炎 |
- ◉かぜをひくと中耳炎になりやすい…耳は耳管で鼻の奥とつながっています。風邪をひいた時は、耳管を通って細菌やウイルスが、中耳に入り込み中耳炎が起こります。
- ◉中耳炎は子供に多い…子供は、大人よりも耳管が太く・短く・水平に近いため、鼻やのどの細菌が中耳に入りやすく、中耳炎にかかりやすくなります。
●急性中耳炎
のど・鼻についた細菌やウイルスが耳管を通って中耳に入り、炎症を起こします。
大部分が「鼻かぜ」に合併して起こります。
3歳までに5から7割の子供が一度はかかるとされている病気です。
好発年齢
6か月~6歳位(特に生後6か月~1歳6か月)
※3歳を過ぎると急に減少します
症状
- 耳の痛み
- 発熱
- 耳漏(耳だれ)
- しきりに耳に手をあてる
- 不機嫌
- 食欲が落ちる
治療
- ◎薬による治療…抗菌剤や炎症を抑える薬を内服します
- ◎膿の排出…膿がたまっている場合は、鼓膜を切開して膿を出します。鼓膜は数日で再生します。
- ◉完治に早くて1から2週間かかる。仮に治っても繰り返すことがあります。
- ◉かぜが原因で起きることが多いので、普段からかぜをひかないように気を付けましょう。
- ◉鼻かぜをひいたら鼻水吸引器等にて鼻水をとってあげたり、かませたりしましょう。
- ◉完全に治りきらないと滲出性中耳炎に移行することがあります。完治するまで治療しましょう。
●滲出性中耳炎
のどの炎症などが原因で耳管が詰まり、滲出液が鼓膜の内側の中耳にたまって起こります。
アデノイド増殖症や副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎があるとかかりやすくなります。
急性中耳炎から移行することがよくあります。
好発年齢
1~6歳位
症状
- 難聴
- 耳の詰まった感じ(痛みはほとんどありません)
治療
- ◎薬による治療…中耳の粘膜を正常化する薬や鼻水をおさえる薬で治療します。
- ◎鼻処置やネブライザー…鼻をきれいにし、滲出性中耳炎を悪化させる要因を取り除きます。
- ◎耳管通気…鼻から耳管に空気を送って、滲出液がなくなりやすくする治療をします。
★なかなか治らない場合★
滲出液の吸引・換気チューブの挿入…鼓膜を切開して滲出液を排出します。換気チューブを入れ、含気を良くします。
滲出性中耳炎のポイント!
20人に1人が難治化し、400人に1人が後遺症を残すことがあります。完全に治るまでに早くても2週間以上かかる場合があり、再発することも多いですので以下のような症状がみられた時は、早めに耳鼻科を受診しましょう。
- 名前を呼んでも振り返らない。
- テレビに近づいたり、音を大きくする。
- 聞き返しが多く、大きな声で話す。
- よく耳をさわる。
☆長期通院の負担や、長期服薬への不安も大きいと思いますが、根気強く治療を続けていくことが大切☆
- 日常生活の注意点
-
- 日常のケア(うがい、手洗い、マスク、十分な睡眠・休養)を十分に
- 風邪をひいたら、こまめに鼻をかむ(片方ずつ・ゆっくり・優しく)
- 鼻すすりをやめさせる
- 自己判断で治療をやめない
- 急に耳を痛がったり、熱がでた場合
-
- 解熱鎮痛剤を使用
- 耳の周りを冷やす
- 耳漏(耳だれ)があれば綿花を入口部にいれ、こまめに交換してあげる
- 鼻をかめない場合
-
- 鼻吸引器でこまめに鼻水を吸い取る
- 部屋の加湿(50~60%)
- 子供が中耳炎になりやすい原因
-
- 細菌に対する抵抗力の弱さ・耳管の未発達・はなすすりや両鼻をつまんでのはなかみ
- 抗生剤が効きにくい菌の増加
- 集団保育・除菌の失敗による再発・授乳時の子供の姿勢・家人の喫煙
- 中耳炎の予防
-
- できるだけ母乳で育てる
- 授乳時には子供の頭を高くする
- 肺炎球菌ワクチンの接種
- 集団保育を避ける(特に2歳未満)
- 鼻をこまめにかます、かめないなら鼻水を吸引してあげる。
- 鼻すすりをやめさせる
外耳炎(外耳道炎)
耳の穴から鼓膜までの外耳道が炎症を起こしている病気です。耳かきなどで傷ができ、細菌や真菌などに感染すると起こります。(プールや入浴時の水、シャンプーなどの薬剤が原因のこともあります)
症状
- 耳痛やかゆみ、灼熱感…口を動かしたり、耳介に触れると痛みが増強します。
- 耳閉塞・難聴感…発赤や腫脹が強く、分泌物が外耳道をふさいでいると伴います。
- 耳漏…耳から膿のようなものが出てきます。
原因
耳掃除のしすぎ(一番多い)・汚れた水が耳に入った・シャンプーなどの薬剤が入った・耳あかのたまりすぎ(たまった耳あかが水を含んで湿り、外耳道の皮膚がふやけると黄色ブドウ球菌などの細菌に感染しやすくなり炎症を起こす)
治療
まずは耳を触らない(耳かきや綿棒を目の届かない所にしまう)
- ●抗生剤の点耳液、ステロイド・抗生剤の軟膏を使用
- ●来院して耳の洗浄…炎症が強く、耳だれが多い場合は、外耳道を温かい生理食塩水で洗浄し、菌の数を減らします。
- ●抗生剤や消炎鎮痛剤の内服…炎症が強い場合
- ●抗真菌剤の軟膏を使用
- ●来院して耳の洗浄
- ●炎症がひどい場合は抗菌剤・鎮痛剤の内服
- ◉特に耳だれを伴う場合は、1回の治療で完治することは難しいです。耳を洗浄することで治るまでの期間が短縮されますので頻回に通院しましょう。
- ◉完治するまでは、家では綿棒や耳かきで耳の中を触らないようにしましょう。
- ◉医師の許可が出るまでプールは中止してください。
- ◉イヤホンは使用しない、ペッドホンかスピーカーを使用する。
- ◉入浴時に水やシャンプーが入らないようにする。
耳垢
耳垢は皮脂腺、耳垢腺などからの分泌物、脱落上皮、毛、塵埃などの混ざり合ったもので外耳道に誰しもたまります。耳垢には、乾性耳垢(乾燥した耳垢)と湿性耳垢(ネットリとした軟らかい耳垢)があります。
これらは遺伝的に生まれつき決まっているものであり、途中で変化するものではありません。日本人の約70%が乾性耳垢で、残りの約30%が湿性耳垢です。湿性であるから病気と言うことではありません。耳垢のたまる速度は、その人の代謝によりますので個人差があります。
- ◉毎日の耳かきは禁止 健康な外耳道をお持ちの方は、外耳道の皮膚が耳の外側にベルトコンベアーのように移動して、耳垢を自然と耳の外に押し出す力を持っています。熱心に耳を掃除しすぎると、かえって耳垢を奥に固めてつまらせて聞こえが悪くなったり、外耳道を傷つけて外耳炎になることが多いです。
- ◉代謝の早い子供、高齢者、外耳道が狭く耳垢が詰まりやすい方、軟性耳垢で自分で取るのが難しい方
毎日耳掃除をするのではなく、2週に1回程度で十分です。
耳の掃除には清潔な綿棒を用いるのが最も安全かつ清潔です。
難聴
急に聞こえが悪くなった場合は「突発性難聴」の疑いもありますので、早めの耳鼻咽喉科による検査および治療を勧めします。治療開始が遅れるほど治りにくい病気もあります。
気になる方は、まずは耳鼻咽喉科を受診されることをお勧めします。
難聴には3種類あります。
- 1伝音性難聴
-
中耳や外耳が正常に機能しなくなり音が伝わりにくくなる難聴です。
音を聞く神経そのものには異常をきたしているのではなく、中耳や外耳の機能が低下している病気ですので、治療や手術などで回復が見込める疾患が多いです。
※代表的な疾患としては、中耳の疾患である滲出性中耳炎や慢性中耳炎などです。
- 2感音性難聴
-
内耳や聴神経に障害がある難聴です。
音が聞こえにくくなったり、音は聞こえるがはっきりわからないといった症状が生じます。 発症からまもないと改善する可能性がありますが、発症から時間が経過した感音性難聴は回復が難しい時が多く、補聴器の使用を考えないといけない時もあります。
※代表的な疾患としては、突発性難聴やメニエール病、騒音性難聴や老年性難聴など、内耳の病気によく見られます。
- 3混合性難聴
-
伝音性難聴と感音性難聴の両方の原因が重なった難聴です。
例えば…
突発性難聴
原因不明で突然耳の神経が傷んでしまう病気です。
まれに音を聞く神経の経路から脳にかけての病気が潜んでいる場合もあります。ヘルペスウイルスが関係しているとも言われています。
早期に治療を開始することで治る確率が上がります。発症してから2週間以内に治療開始できれば、60%の方が聴力改善(完治40%、完治まではいかないが改善20%)すると言われていますので、突然の難聴を自覚した場合は速やかに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
症状
- 突然の難聴
- 耳鳴り(突発性難聴の約90%)
- 耳が詰まった感じ(突発性難聴の約60%)
- めまい(突発性難聴の約30%)
治療
当院では下記(1)〜(3)の薬などを難聴の程度、発症してからの日数、持病(糖尿病や胃潰瘍があるかないかなど)、年齢などを考慮して処方いたします。
- (1)ビタミンB12・B1製剤:内耳に有効なビタミンです。
- (2)脳循環改善剤:内耳の血行をよくします。
- (3)ステロイドホルモン剤:神経の腫れを改善し聞こえを良くします。
※ステロイドというと、よく副作用が問題になる薬ですが、糖尿病や胃潰瘍など持病がなければ、突発性難聴で使用する量・期間では、まず副作用の心配はいりません。
4・5日に1回程度来院してもらい簡単な聴力検査して治療効果を見ながら、薬の量を調整していきます。内服治療にて効果が得られない場合や悪化する場合は、総合病院での、ステロイドや循環改善の点滴治療などをお勧めする場合もあります。
- ◉精神的・肉体的な過労やストレスを避ける。
- ◉禁煙・禁酒